投資用マンションを買った価格より安く売っても、売却に税金がかかることがあります。税金を計算するときの「取得費」が、購入価格より小さくなっている場合があるためです。
当社で相談を受けた範囲では、「安く売るから税金はかからない」と考えている方もいます。売った後に予想外の支払いを知る前に、売買契約の前から取得費と税金の見込みを確認してください。
この記事は、個人が賃貸用の投資マンションを売る場合の一般的な説明です。個別の税額や特例の適用は、税務署または税理士に確認してください。
取得費は、買った価格をそのまま使うとは限らない
取得費は、土地・建物の購入代金や購入時の仲介手数料など、取得に要した金額に設備費・改良費などを加えた額です。建物は、そこから所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。土地は減価償却しません。
賃貸に使っていた建物については、取得から売却までの各年の減価償却費を確認します。必要経費にしていなかった年の分も、減価償却費の累計に含めて取得費から差し引きます。
そのため、「購入価格と売却価格の差」だけでは、税金がかかるか判断できません。まず購入時の契約書で土地と建物の金額を確認してください。建物の減価償却の累計や、購入時に払った費用をすでに必要経費にしているかは、申告資料を用意して税理士に確認してください。必要経費にした費用を重ねて取得費へ入れないためです。
賃貸用物件を購入したときの登録免許税や不動産取得税などは、取得費に含まれません。購入時の費用をすべて足すのではなく、費用ごとの扱いを税理士に確認してください。
参考: 国税庁 No.3252 取得費となるもの、No.3261 建物の取得費の計算。確認日: 2026年10月15日。
売却の税金は、取得費と譲渡費用を引いて計算する
税務上の譲渡所得は、売却の収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。適用できる特別控除がある場合は、さらにその額を差し引いて課税譲渡所得を求めます。
収入金額には、売却代金のほか、買主から受け取る未経過の固定資産税・都市計画税の精算金も含まれます。売却代金だけを使うと、税務上の収入を少なく見積もることがあります。
譲渡費用は、売るために直接かかった費用です。売却時の仲介手数料や売主が負担した契約書の印紙代などが該当します。一方、修繕費や固定資産税など、維持・管理のための費用は譲渡費用になりません。
ローンの返済額も、この譲渡所得の計算で引く取得費や譲渡費用ではありません。ローンを返して手元に残る現金が少なくても、それだけで税金がかからないとは判断できません。
参考: 国税庁 No.1440 土地や建物を譲渡したときの譲渡所得、No.3202 譲渡所得の計算のしかた、No.3255 譲渡費用となるもの。確認日: 2026年10月15日。
税率を分ける「5年」は、売った年の1月1日で数える
一般的な税率は、売った年の1月1日時点の所有期間によって分かれます。
| 区分 | 売った年の1月1日時点の所有期間 | 付加税・住民税を含む一般的な合計税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
長期は所得税15%・住民税5%に、所得税額の2.1%の付加税を加えた率です。短期は所得税30%・住民税9%に、同じ割合の付加税を加えます。2026年(令和8年)分は復興特別所得税2.1%、2027年(令和9年)分以後は復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に内訳が変わりますが、この合計税率は変わりません。売却代金全体へこの率を掛けるのではなく、課税譲渡所得に対して計算します。
売却する日に購入から5年が過ぎていても、その年の1月1日時点で5年以下なら短期に当たります。取得日は原則として引渡しを受けた日です。契約の効力が発生した日を取得日として申告する扱いもあるため、5年の境目に近い場合は税理士に確認してください。相続・贈与による取得では、原則として前の所有者の取得時期を引き継ぐため、別途確認が必要です。
参考: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算、No.3211 短期譲渡所得の税額の計算、No.3202。確認日: 2026年10月15日。
付加税と取得日の参考: 国税庁 No.2260 所得税の税率、財務省 令和8年度税制改正の大綱・防衛財源の税制措置、財務省 令和8年度税制改正について、国税庁 所得税基本通達33-9、同36-12。確認日: 2026年10月15日。
複数の物件を売るときは、同じ年の譲渡所得を確認する
同じ年に複数の土地・建物を売った場合は、一方の譲渡損失をもう一方の譲渡所得から差し引けます。賃貸用物件の譲渡損失は翌年以降へ繰り越せないため、年をまたいだ売却どうしで相殺することはできません。
賃貸用の投資マンションの譲渡損失は、給与など他の所得との損益通算や、翌年以降への繰越控除ができません。マイホームの譲渡損失には一定の要件を満たす場合の特例がありますが、賃貸用物件の売却へそのまま当てはめるものではありません。
複数売却の税額は、長期・短期の区分や費用の扱いも含めて税理士に確認してください。税金だけで売却時期を決めず、その間の持ち出しや売却条件も確かめてください。
参考: 国税庁 No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合。確認日: 2026年10月15日。
契約書と申告資料で、取得費を確かめる
取得費を確認するときは、次の資料を用意すると、購入代金・購入時の費用・設備費や改良費・減価償却を追いやすくなります。
- 購入時の売買契約書と引渡しの記録。取得日と土地・建物の金額を確認します。
- 購入時の精算書や仲介手数料などの領収書。何にいくら払ったかを確認します。
- リフォームや設備工事の契約書・領収書。設備費・改良費に当たるか、修繕費として必要経費にしたかを確認します。
- 過去の確定申告の資料と減価償却の明細。各年の償却額と累計を確認します。
- 売却の見積もりや契約案。収入金額と売却に直接かかる費用を確認します。
取得費が分からない場合には、売った金額の5%を取得費とする「概算取得費」の制度があります。実際の取得費がこの5%より少ない場合にも使えます。ただし、契約書が手元にないだけで、すぐ5%と決める必要はありません。どの資料で確認できるか、税務署や税理士に相談してください。
参考: 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき。確認日: 2026年10月15日。
税金の見込みは、売買契約の前に税理士へ聞いてください
売却価格の見積もりを受け取ったら、税理士に「取得費に減価償却を反映すると、税金はどのくらい見込む必要がありますか」と聞いてください。購入時の契約書と申告資料を用意し、購入価格だけでは分からない点を税理士に確認してください。
当社では、売却価格の見込みのご説明と、税理士に渡す資料の確認をお手伝いします。税額の試算や申告内容の判断は税理士にご相談ください。確定申告については税理士をご案内しています。
まだ売却を決めていない方も、うさぎアセットへのご相談から、売却価格の見込みと手元の資料の状況をお知らせください。
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