• サブリースを解除したいと伝えたら、違約金の金額を提示された
  • 解除には応じられない、と言われた
  • 売却したいが、サブリースが付いていると売れないと言われた

このいずれかであれば、内容を確認しないまま署名や入金をしないでください。

ただし、放っておいてよいという意味ではありません。
契約には、過ぎてしまうと取り返しがつかない期限があります。
確認することと、期限を守ることを、同時に進める必要があります。

なぜ「解除できない」と言われるのか

サブリース(マスターリース)は、お客様が貸主、サブリース会社が借主の建物賃貸借契約です。
入居者との契約ではなく、会社に部屋を貸している形になっています。

普通借家契約では、貸主の側からの更新拒絶や解約の申入れには「正当事由」が必要とされています(借地借家法28条)。定期借家契約は、有効に成立していれば更新なく期間満了で終了しますが、終了通知など別の要件があります。
サブリース契約についても借地借家法の適用があるとされています
(最高裁 平成15年10月21日判決。この事件で直接に判示されたのは賃料の増減額請求に関する32条1項の適用です)。

つまり、「所有者だから自由に解約できる」という形にはなっていません。
「解除できない」という説明は、ここを指していることが多いです。

ただし、「絶対に解除できない」ということでもありません。
契約書に解約の条項が置かれていることは多く、条件を満たせば解約できる場合があります。
確認するのは、その条項と、契約の種類です。

先に、期限を確認する

内容の検討より先に、日付を確認してください。

期限過ぎるとどうなるか
期間の定めがある普通借家契約の更新拒絶通知(期間満了の1年前から6か月前までの間)通知がなければ、期間を除き従前と同じ条件で法定更新され、期間の定めがない契約になります。貸主からの更新拒絶には正当事由も必要です(借地借家法26条・28条)
有効な定期借家契約の終了通知(契約期間が1年以上なら、期間満了の1年前から6か月前までの間)所定期間の通知がなければ満了による終了を借主に主張できません。通知期間後に通知した場合、その通知から6か月を経過すると終了を主張できます(借地借家法38条)
期間の定めがない普通借家など、借地借家法27条が適用される契約の貸主からの解約申入れ原則として申入れから6か月の経過が必要で、正当事由も問われます(27条・28条)。契約の短い予告期間だけで終了できるとは判断しないでください
契約書に定められた解約の予告期間希望する終了日に間に合わないことがあります。貸主からの解約では、契約の種類や法定の要件も確認が必要です
違約金の請求書に書かれた支払期限遅延損害金や督促の対象になりえます

支払期限に「応じない」ことと「無視する」ことは違います。
金額に疑問があるなら、期限までに書面で「根拠の提示を求めており、確認のうえ回答する」と伝えたうえで、
支払期限そのものの取り扱いは弁護士に確認してください。延長が必要なら相手方に申し入れ、合意できた場合は書面で残してください。確認中という連絡だけで期限が延びるわけではありません。

更新拒絶の期限が近い場合は、この記事を読み終えるより先に弁護士へご相談ください。

1. 契約書を「全部」そろえる

「サブリース契約書」1通では足りません。次のものを一式で探してください。

書類見るところ
原契約(マスターリース契約書)契約期間、解約、違約金、賃料改定
覚書・変更契約書原契約のどの条項を書き換えたか
更新のたびの書面期間、賃料、条項の変更
賃料改定の通知いつ、いくら下がったか
免責期間・募集停止の合意書家賃が入らない期間の取り決め
管理委託契約書サブリースと別に結ばれていることがある
入居者との転貸借契約の状況誰がいつから住んでいるか(後述)

購入時に受け取った書類一式に綴じられていることが多いです。
手元になければ、サブリース会社へ写しの交付を依頼してください。依頼した日付を記録しておいてください。転貸借の状況は、入居者の個人情報を必要以上に集めず、確認に必要な範囲で共有を依頼します。

2. いつ結んだ契約かを確かめる

契約を結んだ時期と、その後の変更の有無によって、サブリース会社に課されている義務が変わります。

賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)にサブリース事業への規制が入り、
この部分は2020年12月15日から施行されています(管理業者の登録制度の施行は2021年6月15日です)。

一般の個人所有者を想定すると、確認するのは次の2つです。契約前の説明と、契約締結後の書面交付は別の義務です。

契約の状況契約締結前の重要事項説明・書面交付(30条)契約締結時の書面交付(31条)
2020年12月15日以後の新契約契約前に必要。法令所定の専門的知識・経験を有する相手方には例外があります締結後、遅滞なく必要。30条の説明対象の例外を、そのまま31条にも当てはめないでください
契約内容を変更した説明対象事項の変更について、変更前に書面を交付して説明変更契約締結後、変更事項の書面交付
施行前の契約を変更し、施行後に全事項の説明・書面交付を受けていない説明を受けていない場合は、変更部分だけでなく規則所定の全事項を説明全事項の締結時書面を受けていない場合は、法・規則所定の全事項の書面交付

契約の同一性を保つ期間延長や、組織運営に変更のない商号変更など、形式的な変更は、説明と締結時書面の交付それぞれについて省略できる場合があります。施行前の契約を変更していない場合も、新たな説明等が当然に必要になるわけではありません。どの変更に当たるかは、実際の契約内容で確認します。

30条の例外には、特定転貸事業者、賃貸住宅管理業者、宅地建物取引業者などが含まれます。一般の個人所有者が、投資経験があるというだけでこの例外に当たるとは判断しないでください。各義務の対象や電子交付の要件は、国土交通省FAQの質問13〜16等で確認します。

説明を受けていない場合でも、それだけで契約が無効になる、という単純な話ではありません。
事実関係の記録として意味を持ちます。何を説明され、何を説明されなかったかを書き出しておくと、
弁護士に相談するときにそのまま材料になります。

あわせて、普通借家か定期借家かも確認してください。定期借家は、契約書の表題だけでは判断できません。書面等による契約に加え、更新がなく期間満了で終了する旨の契約前の説明など、有効に成立するための要件を確認します(借地借家法38条)。電子的方法には承諾等の要件があり、個別の成立要件は弁護士に確認してください。

3. 解約の条項を抜き出す

条文をすべて読み込む必要はありません。次を抜き出してください。

  1. 契約の種類 — 普通借家か定期借家か
  2. 誰から解約できるか — 貸主から/借主から/双方から。片方だけのことがあります
  3. 予告期間と通知の方法 — 「6か月前までに書面で」「配達証明付き内容証明郵便で」など
  4. 契約の終了日 — 期間満了日と、解約の効力が生じる日
  5. 違約金の有無と算定式 — 「賃料の◯か月分」「残存期間の賃料相当額」など
  6. 免責期間・原状回復・広告費の負担 — 解約時に別途かかる費用
  7. 入居者(転借人)の扱い — 契約終了時に転貸借がどうなると書かれているか

注意: 条項の条件を満たせば必ず解約できる、とは限りません。
普通借家で貸主から更新を拒絶したり、解約を申し入れたりする場合は、借地借家法28条の正当事由が問われます。契約に解約条項があるというだけでは、その要件を満たすとは限りません。
契約書の条項だけでこの要件がなくなるわけではないと考えられています。
合意解除、債務不履行による解除、借主からの解約は、貸主の更新拒絶・解約申入れとは要件が異なります。どの終了事由を検討しているかを分け、弁護士に確認してください。

4. 違約金は「金額」ではなく「根拠」を出してもらう

提示されたのが金額だけであれば、書面で根拠を求めてください。

  • 契約書の第何条に基づくのか
  • 計算式(何か月分か、単価はどの賃料か)
  • 残存期間の数え方(起算日と満了日)
  • 消費税の扱い

口頭やメール本文の一行では足りません。金額と条項が突き合わせられる形で受け取ります。

その金額が妥当かどうか、条項そのものが有効かどうかの判断は、弁護士の領域です。
ここでは判断せず、突き合わせられる材料をそろえるところまでを行います。

5. 「解除」と「入居者の退去」と「空室での引渡し」を分ける

ここが最も誤解されるところです。この3つは別のことです。

サブリースでは、サブリース会社がさらに入居者へ貸しています(転貸借)。
マスターリース契約が終わっても、入居者が自動的に出ていくわけではありません。

  • 貸主とサブリース会社の合意で解除しても、その効果を入居者に主張できない場合があります(適法な転貸についての民法613条3項。合意解除時に債務不履行解除権があった場合には例外があります)
  • 期間満了や解約の申入れで終了する場合も、入居者へ通知しなければ終了を主張できず、
    通知をしてもその日から6か月を経過するまで転貸借は終了しません(借地借家法34条)

つまり、「サブリースを解除したので空室にして売る」という段取りは、そのとおりに進むとは限りません。
解除の可否と、入居者がどうなるかは、分けて確認してください。

解除しないまま売るという選択肢

見落とされやすいのですが、サブリースを付けたまま売る方法があります。

建物の賃貸借は、借主が建物の引渡しを受けていれば第三者に対抗できます(借地借家法31条)。
そして、その建物が譲渡されると、貸主の地位は原則として買主へ移ります(民法605条の2)。
敷金の返還債務も買主が引き継ぎます(同条4項)。

サブリースを解除せず買主が承継する場合、解除を理由とする違約金は通常生じません。
ただし、売却・承継に関する通知、承諾、名義変更や手数料の条項、敷金・前受賃料の精算、サブリース以外の契約は別途確認します。「何も払わずに済む」とは限りません。

解除してから売る解除しないまま売る(承継)
解除を理由とする違約金かかる場合がある解除しないため通常生じない。ただし承継時の費用・契約条件は別途確認
終了できるか貸主の更新拒絶・解約申入れ、合意解除、債務不履行解除など、終了事由ごとに確認(弁護士確認)解除しないので論点にならない
入居者退去するとは限らない(民法613条3項・借地借家法34条)そのまま
引渡しまでの期間通知から6か月を要する場合がある解除手続きは不要だが、契約承継・通知・精算の確認期間が必要
買主契約と占有の状況しだいサブリースを引き継げる買主
価格契約と占有の状況で変わる保証賃料と契約条項が価格に反映される

どちらが有利かは、物件と契約の中身で変わります。先に決めずに、両方を確認します。

6. 査定額ではなく「概算の手取り」で比べる

売却価格だけでなく、同じ比較開始日から、各案の売却・税支払いまでに手元資金がどれだけ増減するかを比べます。「決済時の手残り」と、その期間全体の増減は分けて計算します。

各案の決済時の手残り
  = 決済日に受け取る売買残代金等 - 決済時点のローン残債
    - 決済時に払う諸費用・違約金 + 決済時の受払精算額

比較開始日からの累計手元資金増減
  = 期間中の現金収支 + 決済時の手残り
    - 上の2項にまだ含めていない税金・その他の支出

期間中の現金収支は、家賃等の入金から、ローン返済・管理費・修繕費等の実際の支払いを差し引いたものです。比較開始後に受け取った手付金は期間中の現金収支に含め、決済時には残代金だけを計上します。比較開始前の受取金は、この期間の増減に含めません。黒字は足し、赤字は引きます。両案で比較開始日をそろえ、期間の長さや決済日が異なることも反映します。

次は仕組みを確認するための仮の例で、当社の成約事例や税額の見積りではありません。決済時の手残りが300万円、まだ含めていない税金等が20万円なら、期間中の現金収支が黒字10万円の場合は 10+300−20=290万円、赤字10万円の場合は −10+300−20=270万円です。

計算を重ねないため、次を確認してください。

  • ローン残債は各案の決済時点の金額を使います。期間中のローン返済は現金収支に含め、そこで返済した元金を決済時の残債からさらに引きません。
  • 敷金等の精算は、実際に所有者が受け取るならプラス、支払うならマイナスです。返還債務を誰が引き継ぎ、売買代金とどう精算するかを両案で確認します。預り金の返還債務の移転は売却益ではありません。
  • 違約金・原状回復費用は、所有者が実際に負担する額だけを、その支払時点で計上します。期間中に払った費用や、諸費用に含めた額を、決済時や別項目でもう一度引かないでください。
  • 諸費用には仲介手数料・登記費用・印紙・繰上返済手数料などを確認します。売買代金等や受払精算額に含めた項目を重複して足さないことも必要です。
  • 譲渡所得税・住民税等は決済後に納付することがあります。決済時の手残りに含まれていなければ、比較には別途見込額を入れます。税額や取得費の扱いは税理士等に確認してください。

これは概算であり、投資の全期間の利益でもありません。解除して高く売れる見込みでも、費用と期間中の赤字が増えれば、累計の手元資金増減では逆転する場合があります。解除・承継それぞれの前提と費用負担をそろえてから比較します。

毎月の収支と、いま売った場合の概算手取りを分けて整理する考え方は、こちらで説明しています。

ワンルーム投資が毎月赤字。売る・持つを決める前に確認する7項目

どこに聞けばよいか

内容相談先
契約条項の効力、違約金の相当性、解除できるかどうか、期限の取り扱い弁護士
譲渡所得・税額の計算税務署または税理士
ローン残債、繰上返済手数料、抵当権抹消借入先の金融機関
売却価格の目安、承継売却の可否、概算手取りの試算不動産会社

当社は、個別契約の効力や解除の可否について、法的な結論を出しません。数字の整理までを行います。

査定は複数社から取って構いません。ただし高い金額だけで決めず、その金額で売れる根拠と、費用を差し引いた概算手取りを確認してください。

まとめ

違約金の提示を受けたときに確認するのは、この6つです。

  1. 契約書を全部そろえる(原契約・覚書・更新書面・賃料改定通知・転貸借の状況)
  2. いつ結んだ契約かを確かめる(2020年12月15日の前後と、その後の変更/普通借家か定期借家か)
  3. 解約の条項を抜き出す(種類・誰から・予告期間と方法・終了日・算定式・付随費用・入居者の扱い)
  4. 違約金の根拠を書面で出してもらう(条項番号・計算式・残存期間)
  5. 「解除」「入居者の退去」「空室での引渡し」を分ける/解除しないまま売る道を検討する
  6. 査定額ではなく概算の手取りで比べる

そして、この6つを進めながら、更新拒絶や解約の予告期間だけは先に確認してください。

「解除できないから売れない」ではありません。
解除しないまま売れる場合があり、そのほうが手元に残ることもあります。

サブリースが付いた物件の出口が詰まる仕組みそのものは、こちらで説明しています。

「売るに売れない」ワンルームはなぜ生まれるのか。出口が詰まる4つの理由


本記事は一般的な説明であり、個別の法律相談・税務相談ではありません。
契約条項の解釈、解除の可否、違約金の相当性、期限の取り扱いについては弁護士へ、
税額の計算については税務署または税理士へご確認ください。

うさぎアセットでは、解除した場合と承継したままの場合の概算手取りを並べる整理を無料で承っています。

弁護士の紹介については、必要に応じて個別にご相談ください。弁護士への相談料は、相談前にご確認ください。

売却を前提としたご相談ではありません。
「いまは動かないほうがよい」と判断すれば、そのままお伝えします。

初回のご相談では、物件名やお部屋番号をお知らせいただく必要はありません。
契約書がお手元になくても構いません。

参考資料